文芸[4月/Apr]

works:大覺寺ツツジ

 東京に部屋を借りた。
 部屋の中を見渡してみると、自分でお金を出して買った家具類が部屋に置かれている。決して豪邸というわけではない。それに、買ったわけでもない、ただの賃貸だ。けれども、ここは間違いなく私にとっての「宮殿」だ。ささやかな王国だ。
「こんな感じで、えーっとね」
 配信画面のパソコンに向き合って、画面の先にいるリスナーに部屋を案内して回る。ひとつひとつ自分で選んだ家具や小物は、私の東京生活をきっと豊かにしてくれる。その中にはリスナーさんから貰った小物や、長いこと私と歩んできてくれたものもあって、まるでこれから始まる一人暮らしや、メジャー活動を見守ってくれているかのようだった。
「よし、じゃあ。今言ってったものを置いていきましょう。お部屋の中に」
 配信の中で写真を使って紹介した家具や小物を、バーチャル空間にインポートする。時計、ベッド、ぬいぐるみなどをどんどんバーチャル化していく。棚に、平面的な本に、それから腰を悪くしてから買ったゲーミングチェア。
「はい、こんな感じで。樋口楓のルームツアー、いかがだったでしょうか!」
 スパチャをしてくれる人や、メンバーシップに入ってくれている人のおかげで二年という時を経て、楓のちりばめられた空間からバーチャルな部屋で雑談をすることができるようになった。
「みなさんのおかげです」